連載では僕が会社を辞めてからの体験をつづっています。現時点でリアルタイムに追いついていません。
Sに習った通り、中国の仲介者「Iさん」経由でAmazonに商品を収め、販売を開始した。
当時の僕に代わって妻が手掛けたのは、既存の商品ページで他のセラーと競いながらモノを売る、いわゆる「相乗り」という方法だ。
Amazonは、同じ商品を複数人のセラーに販売させることで、価格競争を起こさせるシステムを採用している。
大まかに言ってしまえば、最も安値で提供するセラーの商品が「ページ上の一番有利な位置」に表示されるしくみだ。
この有利な位置というのが、商品ページの右上にある「カートに入れる」というボタンにほかならない。
他のセラーは、「こちらからもご購入いただけます」と隅っこの方に追いやられてしまう。
妻はメールでIさんとやりとりし、20万円程度の仕入れを行ったのがだ、最初にここで躓いた。
国際送料の計算ミスだ。
痛恨のミスも「序章」に過ぎず…
国際送料は重量で決まるのだが、実重量のほかに「容積重量」という聞きなれない基準がある。
ざっくりというと、大きさを重量に換算するもので、物流の世界では、実重量と容積重量のいずれか重い方を採用しているのだ。
そんな基本すら知らなかった僕らは、比較的大きな商品を仕入れたのだが、その国際送料がとてつもなく高くついたのだ。
利益が吹っ飛ぶぐらいの水準で、想定よりも10万円ほど高い。
こともあろうに、僕はIさんのピンハネを疑ったのだが、幸い、まだ仮払いした商品代金以外、入金していない。
妻に対応を迫られたIさんは、輸送業者に掛け合って、大幅値引きに成功した。
ようやく利益はトントンといったところに落ち着いた。
Amazonの販売力
そんな「すったもんだ」の末に、いざ、販売が開始されると、Sの言ってた通り、モノが飛ぶように売れるではないか!
初日から、いきなり10万円の売り上げが上がった。
モノがどの程度売れるのかは、Googleの拡張機能を少し追加するだけで、ある程度読めるのだが、まさににデータ通りだった。
なんというお手軽さだ。
すべてが手作業となるメルカリと違って、Amazonの販売力はすさまじい。
3000円を超える商品がどんどん捌けていく。
まるで学校に面した場所にあるコンビニのようだ。
「なんとかなりそうだ」
僕も妻も、そう思った。
不吉な赤い旗 競合相手からのクレーム
ところが翌日、「重要なお知らせ」がセラーセントラルに届いていた
僕の脳裏に、とてつもない嫌な予感がよぎった。
「セラーセントラル」というのは、販売する商品の登録、価格設定、納品などを行う機能を備えたいわば中央制御室で、売り上げの実績、在庫数などの必要情報の登録、閲覧ができる。
そのセラーセントラル左上に赤い旗印が立っていて、緊急事態を彷彿させる物々しい雰囲気を漂わせている。
「なんだろう」
これをクリックした妻の顔面が蒼白になった。
それは、同業他社からのクレームだった。
相手は競合の中国人セラーだ。
たどたどしい日本語で、アカウント停止のリスクをちらつかせながら、「権利侵害」を訴えている。
もはや脅迫文に近い。
すぐに事実確認を行うべく、Amazonテクニカルサポートに問い合わせた。
連載㉖に続く。