雇われの身から脱し、生きる道を模索する僕の家に、何年か振りに幼馴染が訪ねてきた。
ブログのテーマから少し外れるが、とても印象深い話だったので、書くことにした。
僕と幼馴染、2人共通の友人に「ぶーちょ」という人物がいる。
小学生のころ、僕の親友だった小太りの男の子で、シャーペンで描いたような細い目と甲高い声が印象深い。
♪もしもし亀よ~亀さんよ~♪のリズムに合わせて激しく動く、学校主催の「肥満体操」でともに汗を流した仲でもある。
餌に釣られて…
ぶーちょはとにかく嘘つきだったが、家には新作のファミコンカセットがたくさんあり、当時流行ったロボダッチというプラモデルも千体ぐらい持っていたので、卑しい子どもたちが大勢集まってきた。
僕もその一人だった。
「ロボダッチほしい?」
「お父さんとお母さんがファミコン本体を同時に買ってきちゃった。1つあげるよ」
「お父さんのベッドからすごい本が出てきたよ。みたい?」
そんな約束はことごとく反故(ほご)にされ、いつも期待を裏切られる結果になった。
「あんな奴!」と毎回腹を立てるも、あらがい切れない魅力的なオファーにつられ、ついついぶーちょの家に足が向いてしまう…
会社ではパッとしなかった存在の僕も、小学生の時分はクラスの中心人物だった。
ぶーちょも、きっとそんな僕と仲良くなりたかったに違いない。
毎度毎度裏切られながらも、次第に仲が深まり、気が付けば毎日時間を忘れて遊ぶ親友になっていた。
失踪の理由が明らかに
そんな彼が、高校生の時分、忽然と町から姿を消したのだ。
ぶーちょの祖父に行方を尋ねても、お茶を濁すばかり。
「ぶーちょ失踪事件」は憶測だけが膨らんだまま、煮え切らない形で幕引きとなった。
あれから約30年――。
幼馴染いわく「ぶーちょ、2年前に町に戻ってきてたんだよ」
連載④詐欺師になった友達2へつづく。