今回は脱サラした僕の歩みとは関係ありません。印象深い話だったので書くことにしたものです。
幼馴染が語る、ぶーちょ失踪の真相はこうだ。
(詐欺師になった友達1をお読みでない方はこちら)
当時、ぶーちょは高校を中退していた。
そのことを誰にも言わず、劣等感を抱えながら、車の解体業に携わる。
そこで指に大けがをして、仕事ができなくなってしまう。
不憫に思った社長の計らいで、中古車部門の営業職に転身し、それが大成功を収める。
母にマンションを買い与える一方、10歳年下の女性と結婚し、2年前、故郷に錦を飾った――。
ぶーちょは大人になって、一段と魅力的な男になっていたという。
不可解な言動に「戦慄」
気前がよく、トークにも磨きがかかり、地元の友達連中はみんな彼の虜になった。
もちろん皆、車は彼から購入し、修理や車検もすべて任せた。
ところが、時間がたつにつれ、彼の言動に不可解な点が目立つようになり、「ぶーちょフィーバー」もだんだん雲行きが怪しくなる。
地元の友達連中の間では「あいつ、本当に信用できるのか」と、ささやかれるようになった。
「ゾッとするエピソードもあるんだ」と幼馴染。
ぶーちょに車検を依頼した幼馴染の車には、トヨタ純正のナビが搭載されていて、一度通った道を記録する機能が備わっている。
車検後、ナビに残された記録を何気なく確認してみると、この間ぶーちょがたどった道が、とてつもなく異様だったというのだ。
「ひたすら土手を走り、焼却場に立ち寄った後、山道をぐるぐると当てもなく走り回っていたんだ。何をしていたのかわからないけど、何か捨てる場所を探しているような…」
「で、その後どうなったの」と肌を粟立たせる僕。
「結局、理由は聞けず終いだった。そのあとも親交は続いたんだけど、ぶーちょ、突然行方をくらましたんだ。彼から新しい車を買おうとお金を払ったのに…見事にやられたよ」
複数の肩書 名刺も数種類
後にわかったことらしいが、ぶーちょの車の仕入れ先は、すべて近所の中古車屋さんだった。
くだんの中古車屋さんには、自らの職業を「八百屋」と語っていたという。
名刺もあったそうだ。
ぶーちょは違う町の異なる詐欺事件で警察に逮捕され、一家は離散した。
幼馴染はいう。
「母にプレゼントしたマンションもセールスマンとしての成功も、たぶん全部嘘。見事なまでにやられたが、また会いたい。そのとき、お金もきっと返してくれるんじゃないかな」。
心のどこかで僕は、ぶーちょのことを「スネ夫のような存在」と捉えていたが、このとき、実は主導権を握っていたのはぶーちょの方だと悟った。
僕の方が、居心地のいいぶーちょの魅力にやられていたのだ。
愛されたいがために身につけた嘘で、結局、身を滅ぼしたぶーちょ。
罪を償って、何とか更生してほしい。
しかし、どうしても憎めない彼の魅力の源泉は、どこにあったのか。
それを確かめるために、僕ももう一度、かつての親友に会ってみたい。
連載⑤経営者たちとの再会へ