退職届を提出してしばらくーー。
コピーライターへの淡く浅はかな夢は、いつしかの忘却の彼方へ消えゆき、雀の涙ほどの退職金が容赦なく減り続ける。
兵糧攻めほど、恐ろしいものはない。
僕が自己都合で職を失って以来、妻は保母さんのパートに出ているが、賃金の低さは社会問題になるほどだ。
時間の問題とまではいかないものの、貯金が底をつく事態がここにきて、現実味を帯びてきた。
いま思えば「どうってことない」のだ、当時の僕は周囲の目を気にして、少し焦っていたのだ。
公共職業安定所へ アンバランスな求人に救い?
僕は、夫婦喧嘩の諸悪の根源「ニンテンドー3DS」の処分を妻に託し、一度、ハローワークで仕事を探してみることにした。
1週間で20時間未満、かつ1日3時間以内なら、受給資格を失わずに済む――。
急場をしのぐべく、この条件にあうバイトを探す方法もないわけではないが、それでは根本的な問題の解決策にならない。
道に迷う僕は、藁にも縋る思いで再びハローワークの門を叩いた。
失業保険の受給資格を申請し、説明会に出席して以来のことだった。
早速、職員の人に求人の現状を訪ねてみると、「保安」と「介護」の仕事がいわゆる買い手市場になっていて、逆に最も人気の高い売り手市場が「事務職」だという。
全国の有効求人倍率(29年9月)は、保安が7倍以上、事務職が0・5倍以下。
介護職は3.7倍だった。
僕は学生の時分、老人ホーム(ミドルステイ)でのバイト経験があるのだが、保育士同様、とにかく「割の悪い」職場だ。
「神風特攻隊」の生き残りの人から話を聞くなど、本当にいい勉強をたくさんさせて頂いたが、軽い気持ちで続く仕事ではない。
戦後復興の功労者を支える仕事だけに、この労働条件の悪さは何とかならないかと思う。
そもそも、僕のような仕事からあぶれた者のセーフティーネットではないのだ。
人気の事務職は運頼み?
職員の人いわく、逆に人気の事務職は「募集のタイミングが重要な要素になる」と教えてくれた。
何のことはない、要するに「運」ということだ。
僕のような三流大卒の40男は、とりわけ条件が厳しくなる。
薄々は気づいていたものの、レールから外れた者に世間は甘くない。
もとより、「総務」「経理」などの仕事は僕にまったく向いていないし、お役に立てるスキルも資格も持ち合わせていない。
自慢ではないが、僕は「Excel」すら満足に使えないのだ。(さすがに最近は少し勉強をしている)
脱サラ後は「神様」のそば?
どこまでいっても競争、競争の社会に少しうんざりしつつ、「神社」「寺」など、マニアックな求人を調べてもらった。
決してふざけているわけではない。
昔「お坊さんになる」と予言された期待とともに、競争の少なさに目をつけたのだ。
職員の人は「え?」とあるまじき戸惑いの表情を浮かべながらも、自席のパソコンのキーボードを叩いてくれた。
職員:「…」
僕 :「…」
残念ながら、僕の住む地域での募集は1件もヒットしなかったようだ。
連載⑦ビッグビジネスへの誘いへ