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ジャーナリストから転身 40代妻子持ちが自由に生きてみた

連載⑧40代妻子持ちが脱サラ生活へ ご近所の目

無職に厳しいご近所の目。だが時代は変わった

さわやかな朝の日差しは、優秀なビジネスマンにも定職につかない僕にも等しく降り注ぐ。

 

朝9時――。

 

家族全員が出払った家に一人取り残され、ブログを書く以外に何もすることのない僕。

 

外は突き抜ける青空だ。

 

「こんな日は、ずっと家で過ごすのはもったいない」

 

そう考えた僕は、薄汚れた茶色のチノパとインデアンの顔がプリントされた白いTシャツといういでたちで、近くの公園に出かけた。

 

そこで、「自作の体操」を試みた。

 

完全な変態だ。

 

勢いよく手のひらを太陽に掲げ、大きく息を吸い込む。

 

深く膝を落とし、腰をくねらせ、両肩を壊れたおもちゃのようにぐるぐる回して伸び上がる。

 

僕は幼いころから、人知れず、録画したお年寄りのテレビ体操を実践するなど、奇行が大好きだ。

 

堅苦しいスーツから解放され、独自の体操に興じるカタルシスも手伝って、すこぶる気分がいい。

 

「ああ、なかなか気持ちいいな。ここもグーッと伸ばして…」

 

気分転換を求めて悦に浸る僕の背中に、突然、鋭い視線が突き刺さった。

 

勘違いではない。

 

出どころは、道路を挟んだ公園の向かい側、僕の暮らす長屋と違って、デザイン性にあふれる真新しい立派な一軒家だ。

 

ご近所の奥さんである。

 

見られてしまった

 

 

近所の評判 恐ろしい家族への波及

 

この美しい奥さまは、上の子どもよりも3歳年上、同じ小学校に通っている男の子の親御さんだ。

 

子どもは互いに面識があるのだが、この奥様とは妻も口をきいたことがない。

 

想定内の出来事だったはずなのだが、鋭く生々しい反応に、内心穏やかでない。

 

「お、もうこんな時間か。さて、仕事仕事」

 

僕は何も気づかぬフリをして、体裁を取り繕い、公園をそそくさと後にした。

 

私服の中年に不審者の香り

入園式に父の姿。脱サラする者に向けられる目も実は緩和している/

確かに日中、私服で町内をぶらぶらする「中年男」は、きっと不審者に映るのだろう。

 

僕の奇行を凝視するお年寄りは道すがら、僕から犯罪者の香りを嗅ぎ取ったのかもしれない。

 

無職になると、とても肩身が狭いのだ。

 

変な噂が蔓延しようが、僕自身、何とも思わぬ図太い神経の持ち主なのだが、子どもに影響が及ぶとなると、正直たまったものではない。

 

あの子と遊んじゃいけません

 

これが怖い。

 

「そんな親子はこちらから願い下げだ」と強がりたいところだが、僕も子供のころ、昼間からぶらぶらしている近所のおじさんを不可解に思った経緯がある。

 

「あのおじさん、働いていないのかな。お金、どうしているんだろう」

 

気が付けば、自分自身がそんな「不可思議なおじさん」になっていた。

 

ハローワーク主催の再就職セミナーでは、「就職活動中だと胸を張り、堂々としていなさい」と教わったのだが、汚い格好で体操する不審者の立場では、そんな言い訳もむなしく響く。

 

 

入学式・入園式にみる父の姿

 

とはいえ、時代も古い常識も、変わりつつある。

 

子どもの入園式に出席するお父さんの姿は、僕の幼少期に比べて驚くほど多い。

 

僕は記者時代、上の子の入園式には出られなかったのだが、逆に取材先で「よその子の入園式」に出くわした。

 

正直なところ、僕はそれがうらやましくもあったし、仕事を優先する自分を誇らしくも感じた。

 

ただ、同行した取材先のスタッフの受け止めには共感できなかった。

 

いわく「幼稚園に出席するお父さんって、どんな神経しているんでしょうね」

 

当のスタッフは約1年後「体を壊して休職した」と風の便りで聞いた。

 

そこを起点に、彼の人生観が変わったかどうかは定かではない。

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