人生の再出発のお供に欠かせぬ自己管理能力――。
会社組織から離れてしばらくたつが、一時期、僕は新たな強敵との戦いに苦戦を強いられていた。
それは、「自分の怠け癖」だ。
昼過ぎまでパジャマ姿で過ごす自堕落な生活は、とても気持ちがいい。
生きる意味が根底から変わってしまい、「生活への焦り」がとれた僕は、汽の抜けたサイダーのように締まりがなくなっていた。
妻に取り上げられた「ニンテンドー3DS」に代わる心のよりどころを求め、近所のパチンコ屋で1円台をこっそり打つのが密かな楽しみになっている。
悪魔の誘いに乗るだびに、4~6千発程度、なぜか調子よく出るものだから、とかく始末が悪い。
「文鎮に変えない」のがせめてもの抵抗だ。
この日も、お菓子や日用品などの戦利品が詰まった袋を両手にさげ、自動ドアの押しボタンを肘で突いた。
救世主との邂逅に冷汗
奇跡のようなタイミングだった。
否、必然なのかもしれない。
視界を横切る自転車が、急ブレーキを踏む。
そこにあるのは、よく知った顔。
義理の母に、犯行の現場を押さえられてしまったのだ。
スローモーションに変わる世界。
逆流する血液に、キューっと縮み上がる股間。
ばつが悪いどころではない。
口から出まかせ
袋一杯に詰まった景品を携えながらも、「あ、どうも。ちょっとトイレを借りに寄っただけで…」と僕の口から嘘がこぼれる。
義理の母:「あら、そうだったの。がんばってる?」
僕 :「ええ、なんとか。昔のツテでいい仕事にありつけそうです」
急場をしのごうと、見え見えの嘘が次から次へとあふれだす。
「それではまた近々伺いますので」と半ば逃げ出すように、妻の祖母から譲り受けた電動自転車を急発進させた。
反省の末に…
逃げ込んだ先は、いつものファミレス「ガスト」。
このブログを執筆するための、僕のドリンクバー付きの書斎だ。
そこで一つ、大きな問題に気付いた。
僕は長年編集職に携わり、生活の糧を得てきた。
僕はこのブログに
①見知らぬ人とのご縁やチャンスを求める
②自分の生きた証を刻む
③社会奉仕活動
の3つの狙いを込めて書いているのだが、いまのところ稼ぎはゼロだ。
ところが、 昔の感覚で仕事をしているつもりになっていた。
完全に気が緩んでいた。
この状況は、だらしない自分を泥沼の「怠慢地獄」にいざなう麻薬になりかねない。
もとより失敗覚悟で、何のあてもなく、踏み出した一歩だ。
だからこそ、道を開く勢いが生まれるはずだ。
ばつの悪い思いを潤滑油に、さび付いた僕のエンジンが久しぶりに音を立てて動き出した。
ただ正直なところ、この当時と少し心持ちが変わっている。
家族を守る義務として頑張るよりも、「自分を信じ切る」方がきっと大切なのだ。
次回連載⑭では、古巣から復帰のお誘いに「狼狽してしまった」ときの話をまとめた。