メルカリで販売する商品の「動作確認」と称し、ファミコンに興じる僕のスマホに、夕刻、一本の電話があった。
見慣れない番号だ。
誰だろうと思いながらも、愛想よく電話に出た。
僕 ;「はい、もしもし」
? :「おう、俺だ。バカかお前!あぁ?何考えてんだ」
開口一番の毒舌、何よりこのハスキーボイス、どこかで聞き覚えが…
青ざめる僕。
古巣のOB、元ボスのMさんに違いない。
古巣復帰へのお誘い 戸惑いと深い感謝
僕 ;「あ、あれ。いやいや、ご無沙汰しております」
M :「あれ、じゃねえだろお前!親父さんから聞いただろう」
僕 :「あ、はい。すみません…」
Mさんは、何の相談もなしに会社を辞めた上、挨拶にすら来なかった僕の不義理に、相当ご立腹の様子だった。
もし挨拶にお邪魔していれば、やはり強引に引き戻されたはずだ…。
M :「●●が原因だろう!ああ?あんな奴に負けてどうする」
僕 :「いや、決してそういうわけでは…」
M :「じゃあ何なんだ。老後はどうするんだ。甘いんだよ、お前は!」
かくして、30分ほど罵られ続けたが、ようするに「会社に戻れ」という内容だった。
利害関係を超えたところでの申し出に、涙が出そうなぐらい、僕は本当にありがたく思った。
M :「で、戻りたいんだろ。子供も可哀そうだもんな。え、どうなんだ」
僕 :「すみません。即答はできません。でも必ず挨拶には伺います」
結論を先送りにしたというより、失礼のないよう言葉を選びながら、僕は電話を切った。
もう、腹は決まっていたのだ。
運命の扉
確かに、会社を辞めて随分時間がたつが、いまの僕に確たる収入源はない。
何かしらの軽い仕事に就き、足らず分を得意の「メルカリ」で補強してやれば、家族4人ぐらい食べていけなくもない。
だが、どうも気持ちがスッキリしない。
ボスの毒気に当てられた僕は、ふと、あることを思い出した。
「飲みに行こう」と誘われた後、しばらくそのままにしてあった友人Sとの約束だ。
Sは20代で独立した筋金入りの経営者で、いま、4人の社員を抱える小さな会社の代表だ。
割と立派なマンションに住んでいるのだが、新規事業を精力的に立ち上げる挑戦者の身でもある。
Mさんから電話をもらった翌日、地元のバーで僕はSと会うことにした。
そこで僕は、あるビジネスモデルと出会うことになる。
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