Amazonビジネスとの出会いから一週間たった日曜日の午後――。
「◎◎公園の近くだったよな。もうすぐ着くから」
中国ビジネスのプレーヤーであるSからの電話を受けた僕は、彼を自宅に招き入れるべく、急いで外に出た。
中古の「ゴルフ」を駆って、颯爽と現れた彼。
僕の愛車「シエンタ」の出入りをふさぐ格好で、半ば無理矢理、駐車スペースを確保した。
彼は結構強引なのだ。
自販機さながらのAmazonビジネス
早速、Sを自宅に招き入れ、2人でパソコンの前につく。
「お願いします。この御恩は、ライティングでお返しします」
教わる者の謙虚さをみせようと、敬語で話す僕の態度に彼は気にするそぶりもない。
そんなSが一日がかかりで僕に仕込んだのは、Amazonでの販売テクニックだ。
この時まで僕も知らなかったのだが、Amazonは、自社製品の販売にとどまらず、セラーと呼ばれる第三者に「商品販売の場を貸す」ビジネスを手掛けている。
月額約5000円(当時)で大口契約を結び、販売したい商品をAmazon倉庫に納品すれば、あとは顧客対応から出荷まで、すべて一手に引き受けてくれるのだ。
これを「FBA」(フルフィルメント by Amazon)というのだが、まさに自動販売機だ。
「そんな便利なシステムがあるなんて!」。
僕は素直に驚いた。
その反面、手数料が驚くほど高く、モノによっては売り上げの半分ぐらいをもっていかれるという。
「それでも利益が出るのが中国ビジネス」とニヒルに目を細めるS。
かつて楽天の達人に駄目出しされた「肝心の仕入れ先」は、中国のオンラインマーケット「アリババ」「タオバオ」を使う。
そのため、商品調達とAmazon倉庫への発送をお願いする「仲介役」が必要になるのだが、これさえ確保できれば、あとは「売れ筋商品の発注をかける」だけだ。
つまり、仲介役にお金を払って商品調達をお願いし、そのままAmazon倉庫に送ってもらえば、強烈な販売力に乗っかって、モノが自動的に売れていくシステムだ。
どこまでもお手軽なビジネスだった。
次回連載㉔につづく。