こんにちは。
プーです。
プーログ再開以降、親子空手の話題をお届けしております。
今回は、娘と王者の初対決のもようをまとめました。
ずっと「強い相手」を探し求めてきた娘ですが、彼女の空手は全国を制したチャンピオンに通用するのでしょうか。
ではご覧ください。
父をサンドバッグにした打撃練習やスポーツトレーナーが開発した珍器具「BMM」での反射神経強化、杭の上に立って技を繰り出すバランス訓練など、毎晩厳しい稽古に明け暮れるプー姉弟。
空手経験のない無職の父指導のもと、メキメキと実力を付け、わずか4カ月で同門の初心者のなかでは無敵を誇る強さに。
そしてついに娘は、王者との力試しの日を迎えた。
マンガのような修行に明け暮れた娘の実力やいかに。
連載の初回はこちら⇒ プーログ2年ぶり再開|親子で空手に半年没頭|試合の結末は? - プーログ
姉の実力
選手クラスが集う夏季特別稽古のなかに交じって、本格的な組手に挑戦する愛娘。
「エンジョイクラス」からきた末席とはいえ、日々の厳しい稽古は伊達ではない。
格上を相手に、娘は互角以上の戦いをみせている。
とくに地獄ミットで鍛えた蹴りは、選手クラスの相手にも通用することがわかった。⇒地獄ミットの詳細をまとめた回はこちら。
試合運びの巧みさやスピード感などは見劣りするものの、重い蹴りを警戒し、間合いを詰められずにいる子もいた。
そして、(2分×16本でワンセットとなる)組手稽古の開始から半時間――。
ワンセット目の組手は最後の一本となり、娘の向こう側についに小4の王者が立った。
互いの思惑
全国を制した経験もある小4の王者からみれば、娘は「エンジョイクラス」からきた格下の相手に過ぎない。
ひとつ年上とはいえ、帯の色はオレンジ帯で、試合経験すらない相手だ。
空手の世界では5年以上も下の後輩になる。
当然、練習相手になってもらうのではなく「少し手加減し、練習相手になってあげる」と考えるのが、ごく自然だろう。
ひるがえって娘からすれば、小4茶帯女子との組手は特別な重い意味を持つ。
3つ下の弟との組手は手加減せねばならず、最近、ずっと強い相手を求めていたのだ。
いま向き合うのは一切手加減しなくていい相手であり、全力を出すことができる。
つまり、茶帯王者からすれば練習のひとつに過ぎない組手でも、娘にとっては自分の力を試すまたとないチャンスだったのだ。
強襲

親子といのは不思議なものだ。
僕は娘が何を考えているのか、その立ち姿をみただけでわかった。
興奮に鳥肌が立った。
娘は練習の成果を「最初の一撃」に込めるつもりだ。
王者も「初心者の上段蹴りほどノロマなものはない」などと高をくくっているに違いない。
とくに油断している相手への「変則型」となれば、たとえチャンピオンであれ、奇襲が成功する公算はさらに大きいはずだ。
娘はステップワークではなく「歩行に近いモーション」で間合いを詰め、時計と反対まわりに腰をひねる。
もはや間違いない。
王者が胸元にガードを固めてステップインしてきたところで、呼吸を爆発させ、腰から背中にかけて溜めた力を一気に解放した。
「シッ!」
刹那(せつな)、真下からほぼ直線軌道で跳ね上がった右足が、王者の顔面に迫った。
「バチン!」
娘が放った奇襲の「逆雷」(さかいかづち)が、チャンピオンの左頬を捉えた。
「え?」
王者はバックステップでいったん距離を置き、いま自分の身に起きたことを整理し、苦笑いした。
現実の壁
マンガのような展開は「最初の奇襲」までだった。
茶帯女子の強さはやはり「別格」で、壁の分厚さを思い知らされた。
娘の蹴りはミートする手前でことごとく押さえられ、逆に王者は斜め45度から強烈なストマックブローを突き立ててくる。
段々、腕でガードするのが精一杯になり、腰が引けていく娘。
とくに「初見の技」は、反応すらできずにいる。
通常の回し蹴りとは逆の方向から顔の側面に蹴りを浴びせる「内回し蹴り」や、間合いの外から伸びる「上段前蹴り」などをもらうたびに、ヘッドガードが大きくずれた。
何とか反撃に出ようと食らいつく娘の攻撃は「ツーテンポ」ほど遅れていて、空を切るばかりだ。
結果して、娘は年下のチャンピオンに圧倒され続けた。
娘の感想
見せ場といえたのは、最初に当てた変則型の上段蹴りと、途中、突きに合わせて打ったカウンターの左フックぐらいのものだ。
そんな防戦一方の展開に、ひょっとして、娘は落ち込んでいるのではないだろうか。
帰り際、娘に感想を聞いてみた。
父:「ねえ、茶帯の子と戦ってどうだった。あの子、有名なチャンピオンでしょ?」
娘:「滅茶苦茶強かった。でも『強いね』って言ってもらえたぁ~」
娘は年下の強敵に負けた悔しさは微塵も感じておらず、むしろ褒められたことがうれしかったようだ。
師範を乗せたメルセデスが視界を過ぎていく。
僕は親バカを爆発させ、少し嫌がる娘を抱きしめた。
連載の初回はこちら⇒プーログ2年ぶり再開|親子で空手に半年没頭|試合の結末は? - プーログ