こんにちは。
プーです。
今回は、親子での空手修行シリーズ第4弾「昇級審査編(1)」です。
父指導のもと、子供たちがフルコンタクト空手の修行を始めてから3カ月がたち、ついに実戦でその実力を試すときがきました。
公園のブランコに吊るした水袋を打つ「打撃訓練」や倒木を素早いステップでまたぐ「スピード訓練」など、マンガの見過ぎから生まれた独自の稽古は果たして通用するのでしょうか。
下手をすれば「フルボッコ」にされて終わりかねません。
ロマンの空手が神秘のベールを脱ぐ――。
では早速、ご紹介してまいります。
黒帯に至る険しい道のり
燦然(さんぜん)と輝く「ブラックベルト」に至るまでの道のりは、とても長い。
無級の白帯を振り出しに「オレンジ」、「小豆」、「藤」、「紫」、「水色」、「青」、「黄色」、「黄緑」、「緑」、「茶」と10の階段を上り詰めねばならないのだ(※流派によって色の順や階級の数は異なる)。
ベルトのカラーがこの特別な色に近づくに連れて難易度は高まり、険しい道を進むと決めた「武士(もののふ)」たちの身体から、幾筋もの血と汗と涙が流れ落ちる。
ブラックベルトが放つ「魔の吸引力」に涙するのは、過酷な鍛錬に励む戦士たちだけではない。
その家族もまた、「巨額の審査費用」という砂嵐に巻き込まれることになるのだ。
一度の審査にかかる費用は、実に5000円にも及ぶ。
もし2人姉弟の場合、5000円の倍額が一度に請求される計算だ。
この空手地獄は今後10回にわたり、吹けば飛ぶような我が家の家計を直撃する。
一度発車すれば、引き返すことができない片道切符。
その恐ろしさゆえ、僕は子供たちへの説得を試みた。
「お前たち、空手は帯でするもんじゃない」。
レーザービームのような父の眼光に怖気づいたのか。
娘は母のスマホを片手に寝転がったまま、「審査会出たーい」と揺るがぬ己の意志を伝えた。
愛弟子たちは師のあずかり知らぬところで、すでに昇級審査に挑む決意を固めていたのだった。
合否は組手の内容次第
というわけで2人の愛弟子は、父とのロマンあふれる修行を通じて「上帯」を目指すことになったのですが、昇級の合否は、審査会での「基本稽古」「型」「所作」「組手」などを通じて判定されます。
このなかで、とくに重要なのは組手の内容。
(僕の指導では)自然石に見立てた粘土を粉砕する訓練はあっても、組手の練習は手薄です。
週に一度通う道場で組手の稽古をしているようですが、コロナの影響で保護者の見学が禁止されているため、僕が2人の組手を見たのは体験入門時の一度限りでした。
入門時にみたのが最初で最後
虫も殺せぬ性格の姉弟です。
入門当時の2人にまともな組手を期待しても無駄というものです。
実際、コントのような有様でした。
遠慮がちな娘の正拳突きは「キッス」程度、線の細い息子の蹴りは「米粒をついばむ小鳥」ほどの威力しかありません。
とどめとばかりに、出来もしない後ろ回し蹴りを繰り出す始末です。
いまでこそ過酷な稽古を2人に課す僕ですが、当時は小太りの強そうな男の子を見て「うちの子を本気で蹴ったりしないだろうな」など、本末転倒な心配をしたものです。
もちろん、実力が未知数であるというのは、当の本人も同じです。
「ねえ、僕本当に強くなった?勝てる?」と不安を口にする息子に対し、僕は「お前はいま、自分を信じる心の強さが試されている」と煙に巻くのが精いっぱいでした。
目標に照準 閃光のひらめき
そんなこんなで、昇級審査まであと1か月に迫るころ。
道場から目を輝かせながら帰った娘が、昇級にまつわる「ある話」を持ち帰りました。
その話に僕は膝を打ち、「目指すなら、これだ!」と叫びました。
姉弟そろって闘志をみなぎらせ、いつになくやる気になっています。
「いいかお前ら、今日からステージが変わる。審査会まで残り1カ月、より稽古になるが覚悟しておけ」
次回に続く。
※話が脱線し過ぎたせいで、少し長くなりましたが、最後までお読みいただいたことに感謝申し上げます。