プーログ

ジャーナリストから転身 40代妻子持ちが自由に生きてみた

空手姉弟と40代無職の父|猛特訓で娘が「戦闘ロボ」に

f:id:ueaki:20211126130435j:plainこんにちは。

 

プーです。

 

今回も、厳めしい稽古で近所の噂になっている「小学生姉弟空手」の話題をお届けします。

 

前回で終わらせるはずだった「昇級審査編」ですが、書いているうちに話が長くなり、持ち越してしまいました。

 

空手を始めて3カ月、マンガのような厳しい稽古に励んだ姉は、初の実戦の舞台でどのような戦いぶりをみせるのでしょうか。

 

審査当日の模様とあわせて、ご紹介いたします。

奥義「逆雷」

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民家から離れた国道沿いの公園――。

 

道着姿の美しいシルエットが月夜に浮かぶ。

 

プー家の長女である。

 

 

対峙するのは、ブランコに吊るされた水袋

 

丹田に意識を集中したまま、脊柱起立筋を斜め方向にねじり上げる。

 

刹那、おかっぱ頭の少女は「カッ」と目を見開き、閃光のような上段蹴りを放った。

 

回し蹴りというよりは、前蹴りに近い角度だ。

 

水袋のど真ん中に、少女の前足部が鋭く突き刺さる。

 

ぺちん!

 

水袋から飛び散る水しぶきが街灯に照らされ、見事な「虹のアーチ」を描いた

 

ふーっ、できたわ

 

少女は道着の袖で汗をぬぐう。

 

父がエセ解剖学と妄想の中から編み出した奥義「逆雷」が完成したのだ。

余裕綽々

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この日は午前中に下の子が審査を終え、娘の番は午後からだった。

 

普段より口数こそ少ないが、弟ほど緊張しているようすはない。

 

決戦の舞台となる市民体育館に着いたときも、開口一番、「楽しみ!」と余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の表情を浮かべた。

 

 

午後の部の昇級審査に参加したのは高学年児童ら40人ほどで、当然ながら皆、低学年の子供たちよりも一回り大きい。

 

なかには身長が170㎝を超える大きな子もいる。

 

それでも娘は気後れするそぶりもなく、審査が始まってからも、娘は終始落ち着いたようすだ。

 

基本の型も、中上級者さながらの美しいフォームでこなす。

 

続く基礎体力審査では、規定回数を超えてなお「腕立て」「腹筋」「スクワット」を続け、見せ場をつくった。

 

その姿勢に、一度は手を止めた白帯のちびっ子たちも負けじと続く。

 

互いに競い合い、高め合う光景に、審査員は大きくうなづき、優しく目を細めた。

 

 

ここまでは、想定以上に順調だ。

 

あとは大本命の「組手」を残すのみとなる。

捕らぬ狸の皮算用

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実のところ、娘の組手は最初からあまり心配をしていなかった。

 

彼女の放つ中段蹴りはすでに、父の持病「ヘルニア」悪化させるほどの威力にまで高まっている

 

昇級はほぼ間違いない。

 

 

問題はどの程度「飛び級」できるかだ

 

我々師弟が見据えるのは、前人未到の「7段飛び」。

 

つまり、一気に「黄色帯への昇級」を狙うわけだ。

 

これにより、ブラックベルトに至るまでの費用が3万5000円も浮く。

 

 

防具を付けて組手に備える娘の隣で、師である父はそんな「捕らぬ狸の皮算用」にふけっていた。

 

開始10秒前

組手開始の合図を待つ道場は、静けさに包まれていた。

 

未来の空手キッズたちがファイティングポーズを取り、バチバチと火花を散らしてにらみ合う。

 

20人が一斉に向き合う光景は、なかなか壮観だ。

 

 

娘の相手は格上の「オレンジ帯」で、学年は同じ。

 

互いに緊張の色は隠せない。

 

 

例のごとく、道場は水を打ったような静けさに支配され、ただならぬ緊張感が漂う。

 

逆に、廊下で話す人の声は丸聞こえだ。

 

やっぱり僕、おかわりすればよかったよ」というまるで締まりのない会話が場の空気を濁らせる。

 

それでも、笑うものはいない

 

そんなシュールな静寂が「はじめ!」の合図で破られた。

戦闘ロボット

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飛び級」を目指して毎晩稽古に励んだ娘の動きはまるで、重厚感のある「昭和の戦闘ロボ」のようだった。

 

棒立ちの構え。

 

覚束ない足取りでサイドステップを踏む。

 

「ん?」

 

カクカクした動きで繰り出す下段蹴りは、まったく体重が乗っていない。

 

「…え!?」

 

とにかく、すべての動きが緩慢だった。

 

宇宙服を着た人間が月面で戦うような、そんなスピード感だ

 

 

まさかの展開に激しく戸惑う僕。

 

「ひょっとすると、手加減しているのか?」

 

 

娘の組手が精彩を欠く理由。

 

その原因は、とても意外なところにあった。

 

次回に続く。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。