こんにちは。
プーです。
プーログは2日に1度の頻度で更新していくつもりですが、少し遅れてしまいました。
申し訳ありません。
ただ、親子空手をめぐってこの週末に面白いことがありました。
いずれまたご紹介したと思いますので、楽しみにして頂けると幸甚です。
さて今回の話題ですが、親子空手が抱える宿命的な問題と解決に至ったときの話をまとめました。
プー姉弟は、研鑽(けんさん)を積んだ空手の「力試し」を望みますが、道場の外では難しい要求です。
姉弟の切なる声は、一体どうなってしまうのでしょうか。
では、ご覧ください。
力試しを求める姉弟
「こんなのをまともに喰らったら、大人でも効かされるよ…」。
スポーツインストラクター(兼発明家)の友人は、娘がミットに放った中段蹴りの衝撃に目を丸くした。
空手をはじめて4カ月、道場の「エンジョイクラス」でプー姉弟は向かうところ敵なしだ。
トーナメントの優勝だ。
「一度強い人と本気で戦ってみたい」と娘はつぶやいた。
親子空手の問題点
夜な夜な激しい稽古を積み、着実に実力を付けるプー姉弟だったが、修行当初から「親子師弟空手」には大きな問題があった。
父指導の下での稽古では、組手の相手がそれぞれ姉・弟に限られてしまうということだ。
「父にフルコンタクト空手の経験がない」という根本的な欠陥はさておき、実戦の中で技を磨かない限り、トーナメントで勝ち上がるのは難しい。
すでに2人は強いのか、あるいはまだ弱いのか。
そして優勝するにはどの程度稽古を積めばいいのか――。
この時点ではまだ、選手としての姉弟の実力は未知数で、試合に勝つための道のりも不透明だった。
夏季特別稽古
昇級審査以降、この「組手問題」を解消する術(すべ)を見いだせずにいたプーファミリーだったが、夏休みを迎えるころ、そんなモヤモヤをかき消す福音が届いた。
「夏季特別強化稽古をおこないます」
道場から保護者に向けて一斉送信されたLINEのメッセージだ。
大まかにまとめると、こんな内容だ。
- 組手中心の稽古
- 少年(少女)部の試合出場者限定
- 実施回数4回
- 定員30人
- 先着順
父:Σ(゚Д゚)
娘:( ゚Д゚)!
息子:(;゚Д゚)
娘:「強い人と戦ってみたい!」
父:「試合勘を養うのにも役に立つ!」
息子:「いっぱい組手ができる!」
舞い込んだチャンスに、プーファミリーは目を輝かせた。
「月謝のグレード」で露骨な差
父:「30人限定だから早く申し込もう!」
早速、参加希望の旨を送り返したのだが、案内文にひとつ「ひっかかる文言」があった。
試合出場者限定のくだりだ。
試合出場者というのは暗に、週1会員以外を指しているのではないか。
明記こそしていないが、これまでの流れからいくと参加資格は「シルバー会員以上」としている公算が大きい。
道場の窓口に直接電話で確認してみたところ、案の定、「週1会員は想定していない」という回答だった。
窓口の人は「一応、師範に聞いておく」と含みを持たせるも、声のトーンが「社交辞令」と伝えている。
負け犬の遠吠え
「月謝のグレード」に応じてサービス内容に差が出るのは仕方がない。
子どもの習い事にお金がかかるとは聞いていたが、なるほど、勉強になった。
自分のふがいなさを棚上げし、「貧乏人をいじめるな」と叫んだところで、益々惨めになるだけだ。
とにかく、へこんでいるばかりでは幸運は訪れない。
うろ覚えだが、pvに小橋建太も出演する「涙のフォーチュンクッキー」も確かそんなことを言っていた。
さいわい、今日は子どもたちが道場に行く日だ。
もう師範に直談判(じかだんぱん)するしかない。
ミッション
特別稽古参加への直訴(じきそ)は、子どもたちに任せることにした。
親がしゃしゃり出るより、子どもから直接伝えた方が「試合への情熱」を汲んでもらいやすいと考えたからだ。
ただ、恐ろしいほど頼りなく、考えられぬほど当てにならない子供に丸投げするのは心もとない。
念のため、子どもたちのお迎えを兼ねて僕も道場に足を運ぶことにした。
道場の外で待つこと15分――。
師範代:「本日の稽古はこれまで!一同、師範に礼!」
門下生:「ありがとうございました!」
稽古を締める大きな声がミッション開始の号砲だ。
果たして我が子は、与えられた指令をきちんと遂行できるか。
大誤算
練習直後を狙う作戦には、大きな誤算があった。
僕はどうしてそんな大切なことを忘れていたのか。
我が子は、物事に優先順位をつけるスキルを持ち合わせていなかったのだ。
とくに弟は、親に内緒で溜めた宿題を持て余し、「学校のゴミ箱」に全部捨ててしまうような悪童だ。
お母さんにこっぴどく叱られ、泣きながら「二度としない」と誓ったものの、宿題を後回しにする癖はまったく治っていない。
かくしてプー姉弟は、師範代に「練習参加スタンプ」を押してもらおうと、2人仲良く「黄色い台紙」をもって、悠然と長蛇の列に並んでいたのだった。
マスク越しに「そんなのあとにしろ!」と叫んではみたものの、興奮したちびっ子たちの奇声にかき消され、僕の声は2人に届かない。
モタモタしているうちに、肝心の師範は裏口から出て行ってしまった。
メルセデス再び
参加人数に枠を設けている以上、今日のタイミングを逃せば承諾の芽はない。
焦った僕は、裏口の駐車場に向かって全力で走った。
師範を乗せたメルセデスはいまにも発車しようというところだ。
僕は車に駆け寄り、コメツキバッタのように何度も頭を下げた。
すると、後部座席の窓が開き、師範が顔をのぞかせた。
師範:「どうかされましたか?」
父:「道場でお世話になっているプー姉弟の父です。突然の不躾をどうかお許しください。特別稽古のことでお願いがございます」
本当に、お代官様に直訴しているようだ。
師範:「ああ、話は(事務局から)聞いていますよ。強化稽古の件ですね。二人とも参加させるよう、私の方から指示しておきました」
遠ざかるメルセデス
師範の言葉は本当だった。
メルセデスを見送る僕のもとに、「夏季特別強化稽古の案内」をぴらぴらとはためかせながら、子どもたちが駆け寄ってきた。
後に分かったことだが、特別稽古の参加者は「32人」いたという。
「2人ともよく頑張っている」という理由から、師範が特別に枠を設けてくれたそうだ。
この日の師範の計らいは、人事スクープを入手したときぐらいうれしかった。
「頭を下げたままで車のお見送りの技」を4年ぶりに出すくらい、ありがたかった。