こんにちは。
プーです。
今回の話題は、荒々しい攻撃が目立つ小5男子の拳法と、小5女子による我流空手の対決です。
5カ月間、怪しげな稽古で格段に力を増した娘ですが、そんな彼女の「フルパワー」がこの異種格闘技戦のなかで明らかになりました。
また今回は、昇級から異種格闘技戦に至るまでの軌跡を描いた「2章の最終回」に当たり、次回から「トーナメント出場編」がスタートします。
では、親子空手編・二章の最終回をどうぞ。
父をサンドバッグにした打撃練習やプロトレーナー開発の珍器具「BMM」を用いた反射神経強化、杭の上でのバランス訓練など「スポ根漫画」のような稽古に明け暮れるプー姉弟。
空手経験のない無職の父指導のもと、メキメキと実力を付け、わずか4カ月で同門の初心者のなかでは無敵を誇る強さに。
夏季特別稽古での王者との一戦をへて、さらなる高みを目指すなか、今度は「他流試合」に挑む。
そこで初めて、父は「本気」を出した娘の実力を目の当たりにするのであった。
連載の初回はこちら⇒ プーログ2年ぶり再開|親子で空手に半年没頭|試合の結末は? - プーログ
優しすぎる小5女子
娘は正義感が強く、とにかく人に優しい。
弱い人を守るために空手を始め、転校生とは率先して仲良くなり、お年寄りには必ず席を譲り、ノーベル平和賞受賞者「ワンガリ・マータイ」の伝記を愛読するような子だ。
勉強の方はさっぱりで、かつて算数の力試しで「0点」を取った経験もあるが、本当に「道徳」だけは優等生だ。
そんな性格が、空手では「あだ」になっている。
当人すら知らない事実だが、対人だと攻撃に「ブレーキ」がかかり、組手でフルパワーを出せずにいるのだ。
彼女の秘めた力は、「地獄ミット」という極端に厳しい稽古のなかで知った。
トリガーは「怒り」だった。
何度もやり直しを命じられ、ついに娘がキレたとき、キックミットの持ち手が千切れ飛ぶほどの蹴りが飛んできた。
参考⇒小学生姉弟の空手修行|地獄ミットは親のエゴ?無職父の心中とは - プーログ
小5女子の蹴りとは思えぬ、とてつもない破壊力だった。
娘の怒りが頂点に
相手を威嚇するとき、自分を大きく見せるのが動物の基本だ。
反則も辞さないラフファイトを続けるジョニー君の構えは、先刻よりも一層過激になっていた。
前後に大きく開いた両足は「コンパス」のごとく真っすぐに伸び、そのまま回せば直径3mほどの巨大な円を描くことができただろう。
また相手の頭上にかざす左拳は、まるで手中に収めた勝利を誇示しているかのようだった。
ジョニー君の高らかな勝利宣言と露骨な反則に、娘の肩の力がストンと抜ける。
父:「うわ!完全に怒ってる…」。
力の弱い子どもであれ、お年寄りであれ、人が本気で怒る瞬間にそこはかとない恐怖を感じるのは僕だけだろうか。
遠巻きから見ていても、「彼女を取り巻く空気のようなもの」が変わるのがはっきりと分かった。
”おいた”が過ぎたジョニー君へ、娘からの「お仕置き」が始まった。
お仕置きの時間
ジョニー君は、いったん娘の右に身体を振ってから、逆サイドに飛び込み、再び下段蹴りを放つ。
これを読んでいた娘は、1発目を受け流し、2発目の下段蹴りを狙って左膝を突き立てた。
もちろん、単なる「ブロック」ではない。
これこそ、中二病の父直伝、攻撃を攻撃で受ける秘技「忍び返し」だ。
自分の蹴りで自爆したジョニー君が、この日初めて顔をゆがめた。
娘はすぐさま、ジョニー君の左側面に低く入り込み、わき腹付近の急所にフルパワーのボディーアッパーを2発、立て続けにお見舞いした。
強烈なハンマーブローを受けたジョニー君は、しゃちほこのように反り返り、たまらず距離を取るものの、逃げられない。
娘は「人の痛みを知れ」といわんばかりに、同じ急所に「三日月蹴り」を突き刺し、追い打ちをかける。
娘のえげつない攻撃に、ジョニー君はエビのようにのけぞり、大急ぎで後方に「避難」した後、本来白帯の子に向けるべき「優しいローキック」を打ち返してきた。
「本気で戦うのは止めよう」のメッセージだ。
そんな彼の呼びかけを理解できなかったのか、娘はジョニー君を執拗に追いかけ、今度はフェイントからの強烈なローを左腿にめり込ませた。
ジョニー君の身体は「くの字」に曲がった。
決戦に終止符
その後ジョニー君は、ステップワークでカッコよく距離を取り、何度も帯を締め直しながら、優しい攻撃で「停戦のサイン」を送り続けた。
スキンシップほどのソフトな攻撃を通して、「マススパーリング」(三割以下の力に抑えた組手)への移行を必死で呼びかけ続けたのだ。
白帯へのラフファイトを棚上げし、反則行為もなかったことにする「虫のいい提案」といえるが、これ以上のお仕置きは「暴力」でしかない。
ジブリ映画の名作「風の谷のナウシカ」で、主人公が怒りに我を忘れるシーンがあったが、さいわい、娘は「バーサク状態」にあるわけではなかった。
攻撃の手を緩めないのは「生来の鈍感さ」からきている。
幼いころから、冷たい雪を握りしめ続けて泣くような子だった。
乾燥したミミズを口に入れてしまうような子だった。
ソフトタッチの攻撃を何度か受けているうちに、鈍感な娘もさすがにその意図に気づいたようで、優しい下段蹴りをもってジョニー君の申し入れを受け入れた。
大人げないが、正直なところ、この光景に少し胸がスッとした。
これにより、小4の男女をめぐる空手VS拳法の異種格闘技戦は、ラフファイトを仕掛けたジョニー君が返り討ちに合うという結末で、幕を閉じた。
空手の強さというよりは、(小5男子に)体格差で勝る小4女子の強さを印象付けた。
ただ、「女子」というアドバンテージを差っ引いても、娘は強かったといえる。
その後も参加者(初心者)全員を圧倒する強さをみせ、トーナメントでの勝利に一歩近づく結果となった。
次回から新章