こんにちは。
プーです。
2週間ぶりくらいでしょうか。
更新できず、大変申し訳ありませんでした。
ちょっとした事件に巻き込まれ、「にっちもさっちも」いかない状態にありました。
おまけにスマホをトイレに落とすなど、最近本当にろくなことがありません…。
引きこもりのような生活のなかでも、何かしらのハプニングに見舞われるのが不思議です。
今回の事件に関しては、いつか詳しく書きますが、とにかく、まずは連載の続きです。
最終回まで本当にあと少しです。
最後まで書き切ります。
さて、今回の内容ですが、ついに娘と主催団体選手との「因縁の対決」が決着します。
「疑惑の判定」に涙を飲んだ弟に続き、娘の本戦も「大人の事情」による不可解な判定が下されました。
ここまで必死に空手の稽古に打ち込んできたプー姉弟の努力は、理不尽な大人の都合によって、水泡に帰してしまうのでしょうか。
では、ご覧ください。
「スポ根漫画」のような稽古に明け暮れるプー姉弟。
空手経験のない無職の父指導のもと、メキメキと実力を付け、わずか4カ月で同門の初心者のなかでは無敵を誇る強さに。
2人の成長はそこからさらに加速。
とくに娘は合同組手稽古会で男子を相手に圧倒的な強さをみせつけたほか、夏季特別稽古で王者を相手に変則型の上段蹴り「逆雷」を決める一幕も。
そんな2人が満を持してトーナメントに出場した。先陣を切った弟は準決勝で敗退。姉は主催団体所属選手と準決勝でぶつかり、引き分けにもつれ込む。
連載の初回はこちら⇒ プーログ2年ぶり再開|親子で空手に半年没頭|試合の結末は? - プーログ
ありえない判定

本戦で圧倒的な強さをみせた娘だったが、副審の一人がなぜか相手選手に軍配を上げた。
2人の審判が「引き分け」としたため敗退こそ免れたものの、娘の動揺は計り知れない。
泣いても笑っても、マストシステムを採用する次の「延長戦」で必ず決着がつく。
僕は「何とか気持ちを切り替えてほしい」と願った。
そんな心配をよそに、娘はフッと息を吐き、肩の力をストンと抜く。
…あれ?
どこかでみた光景だ。
はて、どこだったか。

ポク
ポク
ポク
ポク
ポク
チーン。

そうだ、思い出した!
拳法との異種格闘技戦を演じた「合同組手稽古会」だ。
乱暴者のジョニー君に、娘が怒りを爆発させた「あのときの背中」だ。(過去記事参照)
成長

このとき娘は「勝つことだけを考えていた」という。
激しく動揺していたのは、「親」だけだった。
僕は顔面蒼白だっただろう。
妻は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になり、頭上に「?」がついていた。
娘は、知らぬ間にとても逞しく育っていたのだ。
気づけばニャンコパンチを卒業し、雷光のような鋭い蹴りを身に付け、体当たりのような重い膝蹴りを放つようになっていた。
昇級審査でみせた昭和の戦闘ロボのようなぎこちない動きも、いまはもう遠い昔だ。
毎日一緒にいるためか、とくに心の成長は、このときまで気づかなかった。
地獄のような厳しい稽古を続けたこの半年間が、彼女のハートを強くしたに違いない。
僕は目頭が熱くなった。
フルパワーの延長戦

「はじめ!」
延長戦は1分しかない。
娘は膝を上げて突進する。
相手選手の一本調子の攻撃は、もう攻略済みだ。
相手のパンチを迎え撃つ娘のカウンターは、さきほどよりもはるかに重い。
娘のフルパワーをみるのは、これで3度目だ。
のけぞる対戦相手に、今度は「三日月蹴り」を突き立てる。
娘らしからぬ一方的な攻撃は、「必死さゆえ」だ。
もっと強く、もっと効かせる――。
勝利への揺るがぬ意志がにじむ。
ここまで歴然とした力の差をみせつければ、八百長しようにも、もう審判の付け入る隙はない。
ところが、僕の想定を上回る事態が起きた。
ホイッスル

ピー!ピー!ピー!
相手選手に軍配を上げた先ほどの副審がイラつくようにホイッスルを吹き、旗をゆらして娘の反則を指摘した。
主審も「ひっかけがあった」と手振りで示す。
もちろん、ありもしないでっち上げの反則だ。
ここまで露骨なやり方は、完全に計算外だった。
子ども同士が命を燃やして向き合う真剣勝負に、「三たび」大人が水を差す。
神聖な空間に割って入ってまで、この大人たちは何がしたいのだ。
これまでも、子どもの努力を踏みにじる行為を何食わぬ顔で繰り返してきたのではないか。
仮に自分の子どもが同じことをされても、胸が痛まないのだろうか。
怒りを通り越し「フルコンタクト空手への失望」を感じた矢先、さらに意外なことが起きた。
空手家の良心

Pee!
Pee!
Pee!
Pee!
Pee!
Peeeeeeee!
一段けたたましいホイッスルをもって、もう一方の副審が反則のジャッジに異を唱えたのだ。
「汚い真似はもうやめろ」といわんばかりに。
ホイッスルは主審が娘の反則を取り消すまで、怒り狂ったようにいつまでも鳴り続けた。
その異様な光景に、会場は少し騒然とする。
結果、主審は「セーフのポーズ」をとって反則を取り消す。
その数秒後に「赤い袋」が投げ込まれ、試合は終了した。
判定は3ー0。
娘の勝利で、因縁の対決が決着を見た。
対戦相手の涙

師範代と娘とともに、対戦相手のもとに向かうと、両腕で顔を覆って号泣する姿があった。
この日の試合にかけて、厳しい稽古を積んできたのだろう。
一度つかみかけた勝利が、手から零れ落ちた悔しさもあったに違いない。
当然ながら、子どもに一切の罪はないのだ。
相手選手の両親も互いの健闘を心から称えているようすで、「ありがとうございました」の言葉には一片の曇りもなかった。
「あっ、ありがとうございました」と急いで頭を下げた僕は、自分だけが汚れている気分になった。
まあ、あれでもし「負け」にされていたら、受け止めはまた違ったものになったかもしれないが…。
娘も罪悪感を感じているのか、どことなく遠慮気味に握手を交わしていた。
小さなガッツポーズ
かくして、何となく喜ぶタイミングを逸してしまったプー親子だったが、意外なところで、娘の勝利に小さくガッツポーズした人がいた。
決勝で娘と戦う、名門空手道場の子だ。
それは、人間山脈を彷彿させる、神に愛されし体躯――。
コートにそびえるその姿は、まるで黒鉄の城だ。
オレンジ帯だったのがうれしかったのか。
それとも「主催団体の選手」でなかったのが幸いだったのか。
「審判を味方につけた相手以上に、厄介な存在かもしれない」と僕は思った。
次回に続く。